SPECIAL
STAFF INTERVIEW
薄井久代
クリエイティブ事業部 美術ルーム 室長
観ている人の心を揺さぶるようなドラマチックな映像を作る
森や集落の描写をみて“風景を描く仕事”を意識しました
中学生のときに、スタジオジブリの『もののけ姫』を観たことが、アニメ業界に入りたいと思ったきっかけです。小さいころから手芸や工作など、ものを作ることがなんとなく好きでしたが、『もののけ姫』に出てくる森や集落の描写を見て、“風景を描く仕事”を意識したんだと思います。
実際にアニメ業界に入ったのは、2002年。アットホームな雰囲気の背景美術会社に入社しました。当初は手描き作業で、紙と絵具で毎日絵を描くということに没頭しました。時代の流れもあり、2~3年目から徐々にデジタルで描くことを勉強し移行していきました。
その後、たくさんの作品で美術を手掛けるスタジオ・イースターに所属し、A-1 Pictures作品としては『アイドルマスター』『聖☆おにいさん』などに参加しました。現在は、CloverWorksで約10名の美術チームとして活動しています。
観ている人の心を揺さぶるようなドラマチックな映像を作る
背景美術は、作品に登場する空間や世界を描く仕事です。
背景は画面の中でキャラクター以外の大半を占めているので、背景の描写、色合い、密度など、描きかた次第で、多種多彩の印象を観ている人に届けることができます。
自分の表現で観ている人の心を揺さぶるような、ドラマチックな映像を作ることができる素敵な職業だと思います。
自分は、美術監督と兼任して、CloverWorks美術チーム全体の作業スケジュールや人材管理などのマネージメントも担当しています。新しく入る方には、背景美術という仕事の楽しさや大変さ、驚きや感動などを知ってもらい、たくさんの経験を積んでもらいたいです。
チームワークを感じられる環境
『四月は君の嘘』『Occultic;Nine-オカルティック・ナイン-』制作時は、自分の作業スペースが、監督、演出、作画のみなさんと並んでいたので、すぐに意見交換ができる環境でした。以前はいち背景会社という立場で関わっていましたが、CloverWorksに所属してさまざまなセクションの方々と話すことで、全体のチームワークというものを感じられて新鮮な気持ちになりました。
関わる人たちと近い距離で仕事をすると一体感があり、作品作りが楽しいですね。
チームでひとつの作品を作るために重要なことは、目指す完成映像がどれだけみんなの頭の中で共有できているかだと思います。
たくさんの人が関わるため、それぞれの認識が少し違うだけで方向がずれていくので、常にコミュニケーションをとってそれを直していく作業が大切です。
この仕事をする上で大変だと感じること
絵には完璧な正解がありません。過去、自分のスキルのなさに心が折れてしまったり、泣きたくなることが何度もありました。でも次の日には不思議と「また描いてみよう」と思うような日々でした。決められたスケジュールの中でみんなが納得いくものを完成させることが、仕事として重要です。
そういう意味で、背景美術は注文を受けて絵を描く“職人”だと思っています。
自分の好きなように描くのではなく、作画さんが描いたレイアウトから意図を汲んだり、監督や演出などの各セクションと表現したいものをすり合わせて具現化するのが大切な部分です。
背景美術で心がけていること
背景美術は、作品全体の雰囲気を作る仕事だと思っているので、その作品の持つ個性を良い方向に発揮できるように心がけています。それを監督やスタッフと世界観を共有した上で、自分が描いていて楽しいと感じる絵を描くようにしています。
描き手のモチベーションは絵に現れると思っていて、その感情はきっとスタッフや視聴者に伝わるんだろうなと意識しています。
新人時代は積み重ねが大事
新人時代は、ひたすら描くということに尽きました。
悩んでいても手が動いていないと経験として身につかないですし、とにかく積み重ねが大事ですね。あとは先輩の絵をこっそり見てタッチを真似たり、画集を見て勉強したり。
はじめのうちは右も左もわからない状態で悩みながら過ごすのは当たり前だと思います。
就職や転職活動中のみなさんへ
この仕事に興味をもたれるということは、多かれ少なかれ過去に見たアニメ作品で心の中に印象的に残っているものがあるのかなと思います。
私は、自分が携わった作品が誰かに届いて、その人が楽しい気持ちになったり、感動したり、すっきりしたり、気持ちを奮い立たせたり、と作品が日常を彩る原動力になれた時、この仕事をやっていてよかったなぁと充実感に満たされます。この気持ちは、キャリアを積み重ねてわかってきたことです。
まずはみなさん、自分が興味を持った世界に一歩踏み出してみてください!
CloverWorksは昨年分社化されたばかりということもあり、ブランド的な固定観念もまだありません。多種多様なジャンルの作品を作れる可能性が無限にあると思います。
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