SPECIAL
STAFF INTERVIEW
阿久根康平×加藤穂乃伽×角田宗大×成田真一郎
制作部
入社6年目社員による制作座談会
皆さんはA-1 Picturesへ入社され、その後の分社化によって現在はCloverWorksに所属されているわけですが、当時、A-1 Picturesに応募した理由をお聞かせください。
阿久根:応募した理由はある程度大きい会社だということと、好きなタイトルをやっていたからです。当時でいうと『ソードアート・オンライン』や『WORKING!!』が好きだったので選びました。
加藤:私もアニメを観ていて、会社名を目にする機会が多いなと感じていたのが志望動機のひとつです。それと、個人的には『あの花(あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。)』に、ものすごく影響を受けたんですよ。今よりオリジナル作品が少なかった時代に、あれだけ感動できるオリジナル作品を作り出せることに感激しました。自分もそんな作品を手がけたいという思いもあり志望しました。
角田:僕は制作会社を志望した時期が遅かったので、募集している会社が少なかったんです。その中でも、公式サイトなどが一番整然としているように見えたので、良い印象を受けたのも志望した理由としては大きいですね。
成田:自分も早いうちからアニメ業界に入ろうと考えていたわけではありませんでした。高校からデザイン関係の勉強をしていたので、何かものづくりを仕事にしたいと思っていたところに、アニメーション制作会社という選択肢が浮かびました。その中で『THE IDOLM@STER』など好きなコンテンツを多く制作していたので選びました。
入社後はどんな雰囲気の会社だと感じましたか?
阿久根:CloverWorksは基本的に接しやすい方が多いんですが、それでも個々のプライベートは尊重してくれるので、ほどよい距離感で仕事ができる環境だと思っています。
加藤:確かに全体的に落ち着いた雰囲気ではありますね。でも、別に静かすぎるわけでもなく、上司とも話しやすいです。あと、私が入ったときは制作部にそれほど女性がいなかったんですが、下の代では女性が増え、今では「女性が少ない」という印象はなくなりました。なので、女性でもすごく働きやすい環境になってきたと思いますね。
角田:僕が入ったときに驚いたのは、新人用の研修期間が設けられていて、電話の取り方などもいちから教えてくれたことですね。当時中途で入ってきた方に聞いてみたら、他の制作会社でそこまで研修しているところはなかなかないとおっしゃっていたので、きちんとした会社だと思いました。
成田:すごく殺伐とした雰囲気を想像していたので最初はギャップに驚きました。仕事で真剣なときと休憩しているときの使い分けができている人が多いのではないでしょうか。聞けば丁寧に答えてくれる上司や先輩がほとんどです。
現在、皆さんがされている制作進行という仕事のおもしろさについてお聞かせください。
角田:達成感はものすごくある仕事だと思います。
阿久根:そうですね。一緒にお仕事をしてきた方ができ上がった作品を観て、褒めてくれたときは特に達成感を覚えますね。僕たちは絵を描けませんし、その他のクリエイティブな作業をすることもできません。でも、そうした作業を各クリエイターと一緒に進めていき、すべての工程を追いかけていくことができます。原画さんや仕上げさんといったクリエイターの方々は基本的に自分たちのセクションしか関わらず、次の工程にバトンを渡していきますが、僕たち制作進行はフィニッシュとなる映像を最初に見ることができます。その瞬間ももちろん感動しますし、それを皆さんと共有し、ともに苦労した方々からお褒めの言葉をいただけたときも喜びを感じます。
加藤:それに、いろんなセクションの方と関わることが多いので、自分の知らない知識や発想を聞く機会も多いですね。それによって、自分のレベルが上がっていると感じられるのもすごく楽しいです。ただ、それだけいろんな人がいると、なかには気難しいと言われているクリエイターさんもいて、コミュニケーションを取るのが難しいときもあります。それでも、自分なりに試行錯誤してやり取りをしていった結果、最後に「任せて良かったよ」と言われたりすることもあり、それもやりがいを感じる瞬間ですね。
角田:素材をまわしていくのが制作進行の仕事なので、もし制作進行が前のセクションにばかり時間を割いてスケジュールを引っ張ってしまうと、最後のほうに時間がなくなって満足いかない完成度のものになってしまいます。それは各クリエイターだけでなく、引っ張る判断をした制作進行のせいでもあります。作品のクオリティーを制作進行が担っている部分も大きいんです。つまり、制作進行がきちんと素材をまわしていくことで、作品のクオリティーを上げられることもあるんです。その辺をうまくコントロールしていくのも、やりがいだったりしますね。
成田:携わる人の多さは自分の想像を遥かに超えていました。今、自分が向き合っているものひとつに対しても、その手前で多くの人が時間を費やした成果の結集であり、また、そこからさらに次の人が待っていると思うと、一日たりとも気は抜けません。その分、完成したものがさらに多くの人々の目に触れていくことの快感は唯一無二だと思います。
現在の業務内容と、今後の目標についてお聞かせください。
阿久根:現在は『約束のネバーランド Season 2』の話数進行と、設定制作の補佐をしています。設定制作というのは、各話数の制作作業に入る前にシナリオ作りや設定作りの資料を準備する仕事です。その中でシナリオの打ち合わせやコンテ発注の打ち合わせにも参加することができるんです。僕はもともとプロデューサー志望だったんですが、働き始めてからシナリオに関する仕事がしたいと思うようになり、設定制作の仕事もさせてもらうようになりました。設定制作を経験することがシナリオの勉強にもなると思ったので。
加藤:実は私も阿久根くんと同じくシナリオライターを志望していて、今は同じように設定制作をやらせていただいています。キャラクター設定や美術設定など作品の世界観を決定するものを各デザイナーさんと打ち合わせて、発注していくのも設定制作の仕事です。また、色や背景を作る段階の打ち合わせにも参加し、作品の根幹を決める打ち合わせを進めていきます。その発注をする段階で資料が必要になるので、監督の希望や作品の世界観に合った資料を集めていくんですが、自分が集めた資料によって作品の方向性もかなり変わってくるんですよ。私も阿久根くんと同じで入社当初はシナリオライターを目指そうとは思っていなかったんですが、やっていくうちにお話の根幹に関わりたいなという気持ちが強くなり、「設定制作をやりたいです」と上司に相談しました。今は少しずつですが、シナリオの仕事もさせてもらえるようになってきたので、制作からだんだんとそちらの方向にシフトしていきたいと思っています。
角田:僕は『ホリミヤ』の制作を担当しているんですが、入社年数的に「そろそろデスクだぞ」と言われることも多くなりました。そのため、まだ制作デスクではないんですが、それに近い立ち位置で仕事をしています。制作デスクを務めるには、まだ未熟なところもあると思うので、優秀なクリエイターさんに作品に携わってもらえるよう交渉する能力など、今は自分に足りていない部分をしっかり見つめて、スキルをあげていきたいと思っています。もともとプロデューサーになりたいと思って入ってきたわけではなく、なんとなくここまで制作進行の仕事を続けてきたんですが、年々下の世代も入ってくるので、ステップアップして、きちんと上に立てる人間になれるよう頑張りたいと感じています。
成田:現在は『ワンダーエッグ・プライオリティ』という作品の制作デスクを務めています。初めての制作デスクかつオリジナル作品ということで、てんてこ舞いの日々ですが、上司にも後輩にも支えられながら勉強させてもらっています。考えなければならない領域が自分の周りだけで完結しないことや、目を配らなくてはいけない部分が制作進行のときと比べて格段に増えるのですが、うまくかみ合ったと思えた瞬間の感覚はこれまでにないものです。今後については、自分が入社してから考えてもアニメの作り方が日々進化しているので、それらを後輩には直接指導し、上司とはその変化について話し合い、会社全体の力を上げていければと考えています。
今年はコロナの影響で仕事のやり方や環境にも変化があったと思いますが、具体的にどのようなことが変わりましたか?
阿久根:打ち合わせなどはほぼリモートになりましたね。ただ、紙の作業が発生する関係上、なかなか一気にすべてをリモートにするのは難しく、出社しなくてはいけない日はありました。
角田:今までは直接お会いして話を聞くことが多かったんですが、これまで利用していなかった人たちも、オンライン会議のツールを使い始めることが増えて、世の中が変わったなと思いました。
加藤:「ちょうど今、時間が空いているので打ち合わせしちゃいましょう」と、簡単な打ち合わせが気軽にできるようになったのは助かっていますね。ただ、日々のやり取りを直接できなくなったことは少しやりにくいかなと。自宅作業のクリエイターが増えて文面や電話でのやり取りが多くなったことで、相手の顔が見えずお互いの温度感がつかみにくい部分はあると思います。
成田:先方の作業環境内で打ち合わせができるのは新しいメリットだなと感じています。我々の仕事はヴィジュアルに落とし込むことが最終的なアウトプットなので、打ち合わせ中に思いついたアイデアやニュアンスをその場で描いてもらい、視覚的に共有できる環境は大きなメリットです。当然、対面の打ち合わせでもそのようなことはありましたが、デジタル作業のクリエイターが増えているので、画面を共有して普段と変わらない状況で絵が描けるというのは、とてもやりやすいのではないかと思います。
最後に「学生時代にこういうことをやっておくと役立つ」というメッセージを就活生の皆さんにお願いできますか?
阿久根:アニメだけではなく、映画やゲームにもたくさん触れておいたほうがいいと思います。どれも映像作品ではあるので、クリエイターさんとの会話の共通言語になりやすいんですよね。「ここはあれっぽい感じなんだよね」と映画のタイトルやゲームの世界観を例えに出される方が多いので、アニメにこだわらず、映画やゲームにも興味をもって、たくさんのタイトルに接しておくことが大事だと思います。
加藤:私は、実体験として“新しい何か”に触れておくことも大事だと思っています。例えば旅行先で陶芸体験をしてみるとか、なんでもいいんですけど、自分の記憶に残るような新しい体験をしておくことがアイデアの引き出しになると思います。しかも自分でちゃんと経験したことなら、“やったことがある”という自負にも繋がるので、時間があるうちにいろんなことをやっておくといいと思います。また、映画などの映像作品でいえば、現在放送中の作品だけではなく、親世代が見ていた作品も見ておくといいかもしれません。実は親と同世代のクリエイターと話すことも多いので、そういうときにコミュニケーションが取りやすくなると思います。あと、学生の方に「コミュ障なんですけど大丈夫ですか?」と聞かれることがあるのですが、コミュニケーション能力の有無よりも、苦手な相手にも自ら話しかけにいくことができるかのほうが大事だと私は感じています。制作進行はたくさんの人と関わるので、その一歩が踏み出せないと仕事ができません。多くの人が集まる学生生活の中で、予行練習をしておくのもいいと思います。
角田:仕事の話だけではなく、雑談をする中でクリエイターさんと仲良くなれるととても良いと思います。仕事はもちろんのこと、それ以外の話も楽しくできれば、自分という人間を知ってもらうきっかけになり、信用していただいた上で仲良くなることができるということなので、次の機会も気持ちよく協力してくれるはずです。他人との話し方や接し方、特に年上とのコミュニケーションに慣れておくことが、この仕事を目指すには必要な要素だと思います。
成田:アニメ制作において一人で完結する工程はひとつもないと思っています。そして、この仕事に正解はなく、さまざまな答えに向けて日々頭を悩ませなければなりません。多くの人と一緒にゴールに達するためには“話を聞く力と伝える力”が大切です。学生の皆さんが今すぐできることは、自分の殻に閉じこもらず、いろいろな人と関わりをつくることではないでしょうか。この情勢において、できなくなったことも確かに多いかもしれませんが、新たな試みやつながりの門戸が開いていることにも目を向けられると良いと思います。