SPECIAL

STAFF INTERVIEW
賀数季利
業務グループ
作品に寄り添い、一人ひとり個性の違うクリエイターのチャレンジを支えていきたい
2024年春に「作画管理」ポジションを新設しました。作画スタッフの育成やマネジメント全般を管理する仕事です。
アニメ業界に入った経緯やキャリアの始まり

アニメ業界に入った経緯やキャリアの始まり
新卒で楽器音響機器のメーカーに入社し、電子ピアノなどの楽器販売や音響機器の卸営業をしていました。数年経ったころに新型コロナウイルスが流行して仕事に大きな影響が出たため、コロナ禍でも活発な業界への転職を考えました。モノづくりがしたかったのとアニメが好きだったのでアニメの仕事が良いなと思い、異業種から転職したのがキッカケでした。アニメ業界ではCloverWorksが3社目です。1社目では制作進行を経験しました。制作進行の仕事はいわば作品のマネージャーですが、仕事をするうちにクリエイターさんをマネジメントする方面に興味が湧き、求人を探してご縁があった2社目に移りました。そこで3年ほどクリエイターの仕事をマネジメントする管理ポジションを経験し、その後CloverWorksに転職しました。
CloverWorksに入社した経緯
きっかけはキャリア採用で「バックオフィス」の求人を見て応募したことでした。より大規模な環境で自分のスキルの幅を広げていきたいと考え、マネジメントとは別の視点からアニメに携わるチャレンジをしようと応募したんです。ところが面接を重ねるなかで、当時のCloverWorksが作画のマネジメント体制を確立させたいと考えていて、ちょうど私が担当していたような管理経験者を求めていたことが分かりました。応募したポジションとは異なる提案をいただいたわけですが、規模の大きなアニメ制作会社でこれまでより圧倒的に多人数のマネジメント業務に携わるというお話は、私自身のスキルアップに繋がると改めて考えて決めました。
作画管理の業務とは
私の業務は、CloverWorksで演出・作画の社員として働くクリエイターの業務を把握し管理することです。その中でも主に、作画の新卒社員のマネジメントを担当しています。私が入社して最初にしたことは皆さんのお仕事についての状況把握や、各人の仕事の見える化でした。出退勤や作業量、スケジュールなど、いろいろな面で皆さんのお仕事が適正に動いているか分かるようにしたんです。クリエイターがより本分に集中できるようにサポートしたいと思っています。
CloverWorksの印象は

CloverWorksの印象は
作品の方向性を見て、穏やかなスタジオなんだろうなと思っていました。作品クレジットでは固定スタッフが多いイメージで、一度CloverWorksと仕事をした後のリピート率が高いのだろうと想像していましたね。あとブランディングがすごいと思っていました。作画育成監督の岡さんによる育成のように、いろいろなことに先陣を切って投資していて中途半端な感じがしないのも良いなと感じました。
入ってからも穏やかな印象は変わらなかったですね。多様な作品があるので、安定して作りたい、チャレンジして作りたい、などそれぞれの価値観で目指すものに合うラインがあるのが良いところです。また、若手だけでなく相談できるベテランがいる点も良いと感じます。ファシリティ周りも素晴らしく「100%のパフォーマンスを発揮できるように移転して環境を整えました!皆さんのために設備投資しています!」というプレッシャーを感じるほどです(笑)。また、制作グループとクリエイティブグループ両方とも執行役員の福島さんが統括していて、組織が分断されておらず、社員からの意見を広く受け止めてくれるので、双方にとっての最適解を出しやすい環境だなと思います。私も意見を言いやすいです。
作画管理としては、作画の新卒採用を始めて5年で縦の繋がりもできています。層が厚くなってきて、目標にできる先輩もいますし、育成のシステムや環境も整っているので、学生の皆さんにおすすめできる会社だと思います。
新卒社員を対象とした育成体制について

新卒社員を対象とした育成体制について
入社後、まずは動画業務からスタートします。動画の研修でしっかり知識を得てから本番の動画業務を担当し、動画を通じて社内作品を学びながら仕事に慣れていきます。原画になるプロセスは、勉強を自己流に任せるのではなく、業務の一環として育成の時間をとり、岡さんの講義や課題で学ぶというCloverWorks独自の育成の仕組みがあります。原画試験に合格したら原画の仕事ができるようになるので、きちんとマネジメントをして、より早く良いアニメーターになれるよう導いていくことが私の命題ですね。原画試験は今のところ年2回の実施をベースにしています。時期がきたら自動的に受けられるわけではなく、動画の仕事ぶりや、岡さんの講義の進捗などいくつか要件があります。岡さんの育成は、いわば原画の仕事を始めるための最短経路になりますが、原画試験では経路をどれだけ漏れなく辿って作業ができたのか、本番の原画業務さながらの条件で皆さんの合否を判断されています。
先ほど独自の育成の仕組みと言いましたが、業務時間のなかで他ポジションの勉強をすることができる環境や、OJTではなく岡さんが作画育成のためだけに練り上げ続けている門外不出の資料を使用しておこなうなど、本当に唯一無二のものだと思っています。新卒社員を対象としているカリキュラムなので、学生の皆さんには魅力的に感じてほしいですね。
新人育成の体制は、作画育成監督の岡さん、動画検査の中村さん、福島さんと私で連携しています。決めごとがある場合は岡さんと中村さんと私で大まかな流れを定めたあと、私から福島さんへプレゼンや最終確認を経て進めています。もともとの体制に私が入った形なので、なにより最初は皆さんと信頼関係を築くことを意識しましたね。いくらマネジメント経験者で担当として入社したといっても私は新参者なので、勝手に出過ぎたりしないように気をつけました。心がけていたのは、受けた連絡にすぐ返事するとか、お願いされたことはすぐにやるという単純なことですが、少しずつ社内関係が築けたと思います。レスポンスはもとから速いほうでしたが、制作進行時代にさらに磨かれたと思っていますし、優先順位や勘どころもその経験で身についたものですね。現在、スキルについては岡さんや中村さんが窓口で、そのほかの会社で仕事をするうえでのありとあらゆることは私が窓口として担当しています。
(画像は、作画育成監督の岡さんが賀数さんをイメージして作成したイラスト)
指導者である岡さんと中村さん
岡さんは業界的にキャリアも実績も実力もある方です。いまの新人世代にとっては年齢が近いわけではありませんが、皆さん素直に悩みを相談したり打ち解けているようです。講義がマンツーマンということもあるでしょうし、岡さんのスタイルが、個人の考えを尊重して自分の考えを押しつけないことや、講義内容も個人に合わせたオーダーメイドなのもポイントだと思います。一人ひとりにしっかり時間をとっているからこそ、受ける側も緊張感をもち、頑張り続けられているように感じます。私自身も入社まで「育成と言っても学校のように集団講義をおこなっているんだろう」と想像していたので、ここまでやっているのかと本当に驚きました。あと岡さんは、根拠がないことは絶対に言わないと信頼されています。育成された人たちがしっかり活躍していることもあり、発言に重みや説得力があります。
中村さんは、周囲をよく見て、とても気を遣う役割をされているなと思います。入社した人が最初に指示を仰ぐのは中村さんですから、まっさらな状態で入社する新人全員と向き合うのは原画育成とは違うところで大変なところもあると思います。また中村さんの場合、いまも最前線で動画・動画検査の仕事をされていて、「現場で誰よりも頑張りたい」という気概でお仕事を続けています。育成に携わりながらも自身のパフォーマンスを落とさず活躍している人はなかなかいません。そのモチベーションの高さは、作画の新人が最初に目にする先輩の姿として、素晴らしいと思います。
動画と原画の仕事
なぜ原画を育成すると掲げながら動画からキャリアをスタートさせているかというと、カットを積み上げることでしか磨かれないスキルがあり、ひとつには仕事の期日を守る訓練があります。うまく逆算しながら進めなければ、期日を守りながら動画をこなしていけないんです。自分の作業スピードを知り、スピードを上げる訓練期間でもあります。動画で期日を守れない人は原画でも難しいです。引いた線の数は裏切りません。
5期生は採用人数が多かったおかげで、一気に社内動画のキャパシティが拡大されました。作品において社内動画の枚数が多くなることは、作画クオリティに直結すると感じたので、今後も維持していきたいと考えています。
ちなみに現在のキャパシティは月5000枚以上です。多くの人は原画の勉強もしながら動画作業をしているので、これはすごい数字だと思います。動画においては、制作側は社内動画のキャパシティを無駄にしないように作品を入れ、作画側はそれに頑張って応えて、またその仕事ぶりやクオリティを見た制作側が次の仕事もできる限り多く入れようと動く。そのようにしてチームでいい作品にしていく好循環をこれからも続けていきたいです。原画も同じで、制作側と作画側がお互い次も一緒にしたいと思える仕事をしていけば、作品クオリティも上昇して内製率が高まると考えています。
内製率でいうと、以前アニメ『SPY×FAMILY』MISSION:27で、作画監督と原画は新卒採用で入社した社員だけで一話数やりきるというチャレンジを達成したことがありましたが、ゆくゆくは当然のように各作品で実現できるようになりたいです。そうなると制作側も助かりますし、私たちの糧にもなります。今後はチャレンジではなく気軽にできるような体制を作っていきたいです。それに向け、スキルの見極めは岡さん、私ではマインドの見極めや希望を聞くなど一人ひとりと個別にやりとりしながら、離職者をおさえて「入社した子は全員を原画にする!」くらいの心意気で接しています。
映像のクオリティに直結する社内の原画や動画のキャパシティを広げ、映像の質を高めていくための「作画管理」というポジションであり、それがマネジメントの責務だと思って取り組んでいます。
社員クリエイターの働き方

社員クリエイターの働き方
かつてはごく一部の人だけが就ける仕事のイメージでしたが、いまは時代が変わってきていると思います。少しでも興味がある人、やりたい人が入って裾野を広げていかなければ業界が成り立たなくなってしまうので、間口を広げたいですね。アニメ業界全体でクリエイターの待遇は良くなっていますが、それはクリエイターを雇用するスタジオが増えている流れもあると思います。私個人はいわゆるクリエイター大活躍の「作画回」や「神回」が大好きではありますが、クリエイターの働き方については、求められるラインを超えたクリエイティブに振り切って結果が出せたとしても、安定したパフォーマンスで会社や現場に貢献する視点も重要視されるようになってきていると思いますし、社員として所属するということは一般的な会社員としての振る舞いも求められると思ってほしいです。CloverWorksでも社員クリエイターに対しては、スキルだけではなく会社員として働いている意識を求めますし、勤怠管理や挨拶ができるかといったことも評価項目として考えています。また会社員として雇用するということは、会社が良くなるように尽力してくれる人を求めているということです。もちろん個人でやりたいことがあり、会社員では実現しにくいのであればフリーランスになる判断も良いと思います。一般的に会社だと個別の希望は叶いにくいこともあります。ただCloverWorksは柔軟に対応することに力を入れていますし、私はそれぞれがやりたいことを実現できる現場を整えることも、作画管理の私の役目だと思っています。
作画管理で目指しているもの
作品を良くするためなら何でもする気持ちでいるので、うまく私のことを使ってほしいです。私の立ち位置は、制作に対してもクリエイターに対しても味方として動く仕事なので、どちらの希望も叶えるために、架け橋として尽力していきたいです。制作とクリエイターは状況により相反するので、作画管理が仲介することで、より良い状況に導ける立場だと思いますし、ストッパーであり理性として機能したいですね。身近な目標は、社員クリエイターに関する問い合わせ窓口として一番最初に名前が挙がる人になりたいです。そのためには自身の行動で示していく必要があると思っています。
クリエイターを社員として雇用している以上、会社はマネジメントする必要があります。制作進行は担当作品をより良くするのが仕事なので、制作以外に全体を見通し、総合的にクリエイターのキャリア支援ができる存在が必要だと思います。現在私はCloverWorksでそのチャレンジをさせていただいています。いまいるクリエイターをどのように活かし、本人たちのスキルや希望をどのように活かせば良いキャリアを積んでいっていただけるか、とことん個別マネジメントに注力していきたいです。
CloverWorksの作画を目指す人たちへ

CloverWorksの作画を目指す人たちへ
CloverWorksに新卒で入った皆さんは、とにかく絵を描くことが好きで、絵を描くことが当たり前で、たくさん描いてきたんだろうな、と想像できます。人物像でいうと、真面目でしっかりしている人が多いですね。学生の皆さんは「絵を描きたい」という強い気持ちがあれば大丈夫です。もっとも、アニメ制作は集団作業なので、基本的に皆さん会社でコミュニケーションを取りながら仕事をしています。描きたいものだけ描ける仕事ではありませんし、人と接することは避けて通れない道であることは理解していてほしいです。
いまアニメーターを目指す人たちは、いろいろな場面で絵が上手だと言われていると思いますが、業界に入ると程度に差はあれ全員必ず、その自負がリセットされてしまうほどの刺激や洗礼を受けることになると思います。入社がゴールではありません。そこから自分を磨いて成長していくのは自分自身なので、強く頑張ってほしいです。より良いキャリアを進んでいくお手伝いはしっかりさせていただきますので、改めてスタートを切るつもりで入社してほしいです。受け身でなく攻めの姿勢で望んでほしいです。お待ちしております。