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STAFF INTERVIEW
中島和子
クリエイティブ事業部 仕上げルーム 室長
携わった作品には最後まで付き合う

絵に自信がなくても大丈夫です
絵に自信がなくても大丈夫です
幼いころから絵を描くのが好きで、学生時代は美術の授業が一番楽しく、特にポスターを描くのが好きでした。
そのころから絵やデザインの仕事に就きたいと思っていて、その気持ちのままアニメ業界に入りました。仕上げは、絵に自信がなくても大丈夫なので、目指しやすかったんだと思います。
前の職場であるスタジオ・ロードでは、動画に一枚ずつ色を塗っていく「仕上げ」と、仕上げ上がりの色が間違っていないかチェックする「色指定検査」を経験しました。出来高だったので、とにかくたくさん仕事をして、経験を積むことを重視していました。スピードを出すことも意識していましたが、ミスのない丁寧な仕事を心掛けていました。
その後、A-1 Picturesで「色彩設計」となり、現在はCloverWorksに所属しています。
関わった作品は多数で、一部ご紹介すると『かんなぎ』『おおきく振りかぶって~夏の大会編~』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『アイドルマスター』『ソードアート・オンライン』『四月は君の嘘』『心が叫びたがってるんだ。』『Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-』『GRANBLUE FANTASY The Animation』『ダーリン・イン・ザ・フランキス』『約束のネバーランド』などです。

色彩設計の仕事とは
色彩設計の仕事とは
アニメの背景以外のさまざまな部分に、色を設定する仕事です。
まず、作品公式サイトのキャラクター紹介などで見ることが多い色、いわゆる基準となるベースの色(業界では「ノーマル色」といいます)を作り、そこからキャラクターの環境、状況、心境によって色を替える「色替え」と言われる工程に進みます。その後、各話数の色指定・検査さんには色の指示を、仕上げさんにはペイントできるように色を設定する「色指定表」を作ります。ノーマル色は、監督、各デザイナー、原作サイドからの意見を取り込んで作ります。各所からの要望が詰め込まれるので、一番時間がかかる作業です。
色替えは、話数ごとの打ち合わせで、コンテを元に、演出上の意見から作っていきます。シーンが多い作品はこの作業が増えるので大変になりますね。例えば『ダーリン・イン・ザ・フランキス』の#22では40色ぐらいの色替えがありました。平均すると30秒に1シーン、色を替えていたことになります。
色指定表は、仕上げさんが間違いを起こさないでペイントしやすいようにと心掛けて作成しています。

心に残っている『アイドルマスター』シリーズ
心に残っている『アイドルマスター』シリーズ
『アイドルマスター』シリーズの仕事は、いろいろな意味でとても深く心に残っています。話数単位で鮮明に覚えているほどです。スケジュールも厳しく、全てが大変でした(笑)。
だからこそ、仕事の在り方や捉え方を改めて考えさせられ、起こりうる状況を予測する力が身に付きました。リスク回避の手段や、保険をかけておくスキルが得られたので、とても良い経験ができたと思っています。
短編の仕事では、ポーター・ロビンソンの『SHELTER』という曲のPV制作が印象的でした。TVシリーズと違って、自由度の高い色を設定することができ、楽しんで仕事ができました。

携わった作品には最後まで付き合う
携わった作品には最後まで付き合う
やりがいを感じる瞬間は、違う作品のスタッフから感想を言われたときです。中途半端な仕事はできないなと思います。
一方、大変に感じる部分としては、スケジュール面で時間の余裕がなくなってくる後半話数をどう乗り切るかです。どうしても、前半と同じような余裕をもった作り方ができなくなってきますが、フィルムにそれを出さないようにするのがなかなか厳しいところですね。
そこをカバーするためにも、当たり前のことですが、携わった作品には最後まで付き合うことを心掛けています。各話のV編(ビデオ編集の略。制作した映像の最終確認をし、納品用のテープに収録する作業。)が終わるまでは他のスタッフと一緒に会社にいます。放送されるものが全てと個人的に思っているので、時間が許す限り色も調整しています。
そして、いつも大切だと思うのは、作品作りに携わるスタッフとのコミュニケーションをしっかりとることです。アニメはチームで作っているので、シンプルですが結局これに尽きるなと思います。
CloverWorks社内には、監督、演出、作画、仕上げ、美術、撮影と全セクションのスタッフが常駐しているので、わからないことがあればすぐに聞ける良い環境だと思います。

アニメ業界やCloverWorksを志望する人へ
アニメ業界やCloverWorksを志望する人へ
「アニメが好き」な方が業界を志望されることが多いですが、アニメ以外の趣味や特技もあると良いなと思います。仕事で煮詰まっても、アニメ以外のことで気分転換ができることが、この仕事を長く続けられる秘訣かなと思います。
そして、CloverWorksに入りたいと思ってくれる人は、好きな絵や映像など、いろんな作品に触れる時間をたくさん作ってきてもらいたいです。見て感じとるのは大事なことだと思っています。
© NBGI/PROJECT iM@S
© 白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会