SPECIAL
STAFF INTERVIEW
幸喜あすか×宮沢絵梨奈
クリエイティブ事業部 美術ルーム
入社3年目社員による美術ルーム対談
お二人がCloverWorksを志望した理由をお聞かせください。
幸喜:CloverWorksは多様なジャンルの作品を扱っているので、さまざまな作品に携われると思ったからです。また、アニメ制作に関わるほぼすべてのセクションが社内にあるところにも魅力を感じました。背景美術に特化した専門の会社もあるんですが、こうしたアニメーション制作会社なら他セクションの方とも関われる機会が多いはずで、そういう環境なら、多面的な視野で仕事ができると思いCloverWorksを志しました。
宮沢:私は就職活動の最初の時期、アニメーション制作会社ではなく、背景に特化した会社ばかり受けていました。ただ、そうした専門的な会社はかなり少ないので、就職活動をしているうちに制作会社も視野に入れたほうがいいなと思うようになりました。そこで制作会社のことを調べていくと、幸喜さんも話していたように、制作会社は一つのものをみんなで作っていく素敵な環境なんだと感じました。それで、途中から制作会社へ視点を変え、CloverWorksを受けることにしました。
“絵を描く”ということに関して、それまでどのような勉強をされてきたんですか?
幸喜:高校も大学も美術系だったので、高校からずっと美術について勉強してきました。基本的には油絵とデッサンをやっており、風景以外にも人物画や抽象画の課題もたくさん描いてきました。ただ、私の中では描くものの空間作りや空気感を作ることが大事だという意識が強かったので、その考え方は現在の背景美術の基本になっていると思います。
宮沢:私も小さいころから絵を描くのが好きで、高校も美術科があるところに行きました。でも、受験のときに美大か普通の大学かで迷い、結局、美術の道は険しいだろうなという思いから、一度は服飾系の大学に進学したんです。でもやっぱり自分は絵を描くのが好きだなと思い、その四年制大学を辞めて美術専門の二年制に改めて入りました。そこでは水彩画や日本画を勉強していました。
実際に入社し働いてみて、どのようなことを感じましたか?
幸喜:仕事をしてみて初めてわかったこともたくさんありましたね。アニメの背景美術は原図をもとに各カットの背景を作成するんですが、単純に描くだけでなく、その原図からいかに情報を拾うか、そして、作品の雰囲気をつかむために絵コンテをどう読み解くかが、とても大事なんだと実感しました。そうした絵を描く以外の技術も身につけていきながら、絵を描く技術も向上させなくてはいけない、その両立が大変でもあり楽しくもあるなと感じています。
宮沢:入社前は背景美術の仕事内容について調べても、なかなか情報がなかったので、いざ仕事に就いてからその大変さを知ることが多いです。私のイメージでは原図も用意されず、最初から自分で描いていくものだと思っていたんですが、そこは違いましたね。ただ「ここはおまかせで」と書いてあるところもあって、そういう場合は自分で素材となる画像を検索して描いていかなくてはなりません。もちろん検索したものはあくまで参考なので、それをアレンジしていくセンスも成長させなくてはいけないと思っています。
背景専門ではなく各セクションのある制作会社で働くメリットは、入社後にも実感できましたか?
幸喜:そうですね。最初のころから見学という形で会議やラッシュチェックに呼んでもらえる機会があり、そういう場ではさまざまなセクションの方々の話を聞けるので、すごく刺激を受けています。ラッシュチェックのときに「このシーンではこういうこともできますけど?」といった話が結構飛び交うんですよ。私はまだ他セクションの技術について知識が浅いので「そういったやり方もあるんだ」と驚くことも多いです。
宮沢:私も会議に参加させていただくなかで勉強になるなと感じることが多いです。それに、新入社員研修では仕上げや撮影、制作進行など他セクションの同期と一緒にアニメの制作工程を勉強したので、そうした研修させていただける環境もすごくいいなと思いました。
社内の雰囲気や同僚とのコミュニケーションの取り方についてはいかがですか?
幸喜:基本的にはすごく物静かな職場で、集中して作業できる環境ですね。でも、上司や先輩は和やかな雰囲気の方ばかりなので、仕事の合間などはとてもアットホームな空気感で、こちらからも話しやすいです。そういった点できちんとメリハリもあるので、仕事がしやすい空間だと感じています。
宮沢:私も職場の雰囲気は幸喜さんと同じように感じていました。でも、コロナの影響で4月くらいからは、基本的にリモートでの自宅作業になっているので、かなり寂しいですね(笑)
幸喜:そうだよね。寂しい気持ちはよくわかるな。
やりがいに感じている部分はどんなことですか?
幸喜:ほとんどの作業をPhotoshopでおこなうんですが、私は入社前にそのソフトをあまり使っていなかったので、仕事をしていくなかでいろいろな技術を直接教えてもらいました。教えてもらった描写が自分でもできるようになるとすごく感動しますね。仕事をこなすうちに実践的な技術が身についていくので、できる表現がどんどん広がっていくのを実感できる瞬間がとても楽しいです。
宮沢:私は自分の描いた背景の上で、作画さんが描いたキャラクターが動いている映像を見たときにやりがいを感じますね。描いているときは「本当にこの仕事に向いているんだろうか?」と悩むときもあるんですが、放送されたものを観た友人から「すごくよかったよ」と連絡を受けたりすると、この仕事をやってきてよかったと思います。
作業中に「向いているんだろうか?」と感じてしまうのはどういうときですか?
宮沢:入社して丸二年ですが、私の中ではまだまだ修行中の身という感覚があり、周囲と自分との差を大きく感じてしまうんです。自分の作業が遅いときや、美術監督に見せたあとに「こういうところを修正してみて」と少し手を加えられただけで、自分が描いた絵が全然違うものに見えたりすることがあるんです。そんなときはすごく落ち込むのですが、自分が今まで頑張ってきたことを思い返しながら、気持ちを高めて踏ん張っています。
ほんの少しのアドバイスで絵がガラッと変わったりすることがあるんですか?
幸喜:結構ありますね。彩度やコントラストなどをほんの少し変えるだけで、見栄えが大きく変化することもあります。そういうことの積み重ねの日々ですね。あと、私はやっぱり締め切りとの兼ね合いによく悩まされています。時間が削られてしまうと自分の中で納得できるクオリティーになかなか持っていけないし、締め切りというプレッシャーがかかっていると作業にも影響が出てしまいます。なので、単純に描くことだけでなく、時間との兼ね合いをいつも大事にしていきたいと思っています。それが今の私の課題ですね。
宮沢:私も時間配分にはかなり苦労しています。描くスピードがまだ全然追いついていなくて、自分の実力を思い知ることが多いです。入社する前にもっと描くスピードを上げておけばよかったなと思っています。
お二人のこれからの目標についてもお聞かせください。
幸喜:将来的には美術監督になりたいのですが、今はそのための技術を学んでいくことがとても楽しい状況です。ですので、とにかく仕事を意欲的にこなしていき、その中でどんどん技術を吸収していくことが目標です。
宮沢:私も美術監督になりたいと思って入社しましたが、当時は具体的な仕事内容まではわかっていませんでした。入社後に知って想像以上にすごく忙しそうだなと思いましたが、楽しそうにやられている感じが伝わってくるので、別に忙しさは苦ではないんだということもわかりました。私にとっては「いつかこういう風になりたいな」というまだ憧れの存在ですが、そのために自分には身につけるべきことがたくさんあるので、今の目標は「とにかく技術を高めていきたい」ということです。また、いつかは映画の美術をやってみたいので、そちらの模写などをして勉強しています。
宮沢さんは「もっと描くスピードをあげておけばよかった」とおっしゃっていましたが、背景美術を目指す学生さんにアドバイスを送るとしたら、やはり「描くスピードをあげておく」ことになりますか?
宮沢:そうですね。いろんなアニメを見ておくことも大事なのですが、私が入社して思ったのが、やっぱり数を描いておかないと身につかないので、とにかくアニメの模写をもっとしておけばよかったということなんです。美術系の学校に行っていない人だと描く時間が少ないので、「1日に最低デッサンを一枚」とか自分で決めて実行しておくと良いと思います。見る力や色の塗り方も勉強になるので。
幸喜:観察眼を養うこともすごく大事ですね。例えば、扉を一枚描くことになったとしても、扉全体を側面から見たらどうなっているか、ドアノブはどんな形をしているかなど。普段から細かく観察する機会はなかなかないので、いざ描くとなると戸惑ってしまうと思うんですよ。なので、街中でも電柱の構造や看板の種類に目を向けるなど、いろんなことに興味をもち、観察する習慣をつけていると役に立つと思います。また、展覧会や舞台、映画など、いろいろなことにアンテナを張っておくと良いと思います。そして、少しでも興味があるものを見つけたらフットワーク軽くさまざまなものを鑑賞し、視野や価値観を広げておくことが大事だと思います。