SPECIAL
STAFF INTERVIEW
山口 舞×金森つばさ
クリエイティブグループ 仕上げルーム×クリエイティブグループ 撮影ルーム
新卒採用で入社した私たちのキャリアと夢
学生時代はどのような勉強していたこと
山口:私はアニメの専門学校に通っていました。そこで演出や作画を含めアニメ制作全体の流れを勉強する課程があり、そのなかで私は仕上げが一番楽しいなと感じたことがきっかけで専攻しました。課程で挑戦した作画は私には難しかったですが、色を学んでいけば、そういう各工程のプロの皆さんとも一緒に仕事ができるかなと思い、しっかりと色の勉強をしたうえでアニメ業界へ向けて就活をしました。
金森:私は美大のアニメーション専攻で、山口さんと同じようにすべてのセクションをひととおり経験できる学部でした。課題では自分で脚本、演出、作画、仕上げ、撮影までの全てをこなす必要があり、そのなかで撮影が一番楽しかったので撮影の道に進むことにしました。大学ではアニメーションサークルにも入り、いろいろな自主制作もしました。じつは絵を描くのが苦手でして、美大の入試も絵ではなく小論文で入ったんです(笑)。そういうわけで仕上げか撮影をやりたいと思ったのですが、自分にとっては撮影が純粋に楽しかったことと、処理の仕方で完成映像の印象が大きく左右される点に感動したので撮影を選びました。
CloverWorksに応募した理由
山口:最初は会社の特徴を知らないまま、業界のなかで有名な会社だから受けようと思いました。当時のA-1 Picturesが制作していた『つり球』がすごく好きだったのも理由のひとつです。仕上げの就職先は、制作会社か仕上げ会社のどちらかがほとんどです。比較的大きい制作会社でも仕上げの部署がない会社もあるなか、A-1 Picturesはすべてのセクションが揃っていて、他のセクションひいてはアニメ制作全体に関わることができそうだと思い選びました。
金森:私は『おおきく振りかぶって』が好きだったのでA-1 Picturesに興味をもちました。調べていくうちに、A-1 Picturesはさまざまなジャンルの作品を手がけているということを知り、私には飽き性な面があるけど、この会社なら仕事を続けていくうえでも自分の性質にあっていそうだなと思い志望しました。
10年弱のキャリアで入社から現在までの歩み
山口:入社してからはまず「仕上げ」という動画に色を塗る作業から始まりました。最初はひたすら動画をスキャンしデジタルに取り込んで色を塗り、カットを仕上げました。その作業を重ねて枚数がこなせるようになり、塗り間違いもなくなったところで、色指定検査をさせていただけるようになりました。初めて担当したのが『四月は君の嘘』で、そこから8~9年間色指定検査として経験を積み、『その着せ替え人形は恋をする』で初めてテレビシリーズの色彩設計を担当しました。
金森:入社してしばらくは撮影として仕事をしながら技術を磨いていましたが、2年目ぐらいのころに3か月間だけ撮影として大手の制作会社に出向する機会があったんです。他社に出向するのは異例でしたが、とても良い経験になりました。出向から戻ってきたタイミングで私にも撮影監督補佐のお話があり、『エロマンガ先生』という作品で初めて補佐を任せていただきました。そこからしばらく補佐の仕事をしながら研鑽し、『その着せ替え人形は恋をする』で初めてテレビシリーズの撮影監督として参加することができました。
具体的な職務のステップアップについて
山口:「仕上げ」は動画素材に指定通りの色を塗り完成させる作業ですが、「色指定検査」は1話数全体の素材が正しく作成されているか確認する役割で、その話数の色を任されています。テレビシリーズが全12話だとすると、色指定検査が3~4名いて、順番に1話ずつ担当していくようなイメージです。「色彩設計」は作品のキャラクターやシーンの色などを設計します。作品の根幹にかかわる全体の色を色彩設計が作り、各話の話数だけに特別に出てくるような物の色は、その話数を担当する色指定検査が色をつくります。細かい色づくりを色指定検査で経験し、色彩設計になると作品全体の色づくりを任されるようになります。
金森:あくまでCloverWorksのやり方ですが、まず「撮影」として制作進行から運ばれる各セクションからの素材を1カット単位で担当し、撮影監督が作った見本に合わせて映像にします。次に、「撮影監督補佐」になると、撮影監督のサポートとしての役割が加わります。入ってきた仕事を撮影が作業できるように整理したり、打ち合わせやラッシュというムービーチェックに参加します。そして「撮影監督」になると撮影用の見本を作り、部内のスケジュールを管理する業務も加わってきます。「クリエイティブディレクター」は撮影監督から画面についての相談を受けてアドバイスをしたり、フォローするような役職です。イメージ通りの画面作りをするにはどんな手法が考えられるのか、どんな素材が必要かといった知識や経験に基づいたアドバイスをしてくれます。
新卒からのキャリアアップについて
山口:初めて色彩設計を担当した『その着せ替え人形は恋をする』と同時に、『くの一ツバキの胸の内』という作品でも色彩設計を担当していました。放送時期は違っていても、現場の業務は時期が重なる部分もありかなりハードでしたが、ずっと色彩設計をやりたいと目指してきたので、その気持ちを思い出しながらなんとか乗り切りました。結果、『その着せ替え人形は恋をする』では、特に最後の花火のシーンをすごく評価していただき、自分でも満足いくものになったので大きな達成感がありましたね。がんばって本当によかったです。
金森:撮影監督は、最初に見本を作るので、監督が求めている完成イメージを基にしながら自由度の高い処理を入れることができます。撮影監督として、やっと自分のやりたい処理ができるということが一番楽しかったです。撮影監督はスケジュールが詰まってくると遅くまで作業したり、つらいこともありますが、自分が撮影監督になったらこうしたいと思っていたことを実践できたので、とてもやりがいがありました。完成画面を作りあげる過程では、監督や演出とのモニターチェックで撮影処理のリテイクも出てきます。監督たちの意見を受けて調整してみると実際に画面がすごく良くなって、自分だけでは到達できなかった画面が完成するんです。もちろんリテイクを受けたことに対して悔しい気持ちもありますが、全員でより良いものを作り上げたという達成感と楽しさも経験することができました。
クリエイターとして大事にしていること
山口:色彩設計は色を統括する業務ですが、アニメ制作はたくさんの人たちと分業して作るものなので、監督や演出からのオーダーをふまえて作業します。作品全体が理想形から離れないように、オーダーに応えられる実力が大事ですし、必ずクリアできるよう心がけています。最初はイメージを言葉で説明されることから始まるので、具体的にどうすれば良いか答えを見つけにくいこともよくありますが、いかに監督たちのイメージを具現化できるかを考えながら仕事をしています。
金森:撮影に集まってくる素材は、各セクションのみなさんが監督たちとチェックを重ねて作りあげられてきたものなので、できるかぎり撮影でイメージを壊さないよう気をつけています。画面のフィルターも、入れ方によっては本来意図した色味から大きく変わってしまうこともあるので、特に気をつけるようにしています。
それぞれの職場の雰囲気について
山口:仕上げの部署は、作業に集中している静かな空気感です。しかし仕事以外ではアニメや漫画、ゲームが好きな方が多いので雑談で盛り上がっていることもあります。オンでは静かに仕事をして、オフでは明るい職場だと感じていますね。
金森:撮影の部署は普段から結構ワイワイしている感じです(笑)。たわいもない会話を気兼ねなくできる人が多い印象です。集中すべきときはもちろん切り替えていますが、仕事が詰まっていない時間や待機時間などは雑談していることが多いです。
山口:確かに撮影ルームからはそんな声が聞こえてくるので、楽しそうだなと思うことがあります(笑)。納品前にはものすごい量の作業が入ってくるはずなので、それを全員で熱量高くこなしていくチーム力が高いなと感じます。
金森:撮影としては仕上げさんたちには本当に感謝しています。素材でおかしな点を発見したときは、細かい部分をフォローしたうえでこちらに回してくれるのですごく助かります。
山口:次のセクションである撮影さんが仕事しやすいように、検査など仕上げの段階で素材面のフォローをすることはあります。
金森:本当にありがたいです。忙しくて切羽詰まったときも、お互いにすぐ相談したり確認をとることができるので、社内に全てのセクションがあるのは会社の強みだと思います。
今後やりたい仕事について
山口:私は今後もテレビシリーズの色彩設計として仕事をしたいと思っています。いずれはオリジナル作品の色彩設計を担当してみたいです。今はまだ経験不足でわからないことも多いので、いろいろな作品に色指定検査として参加しつつ、その目標に向かって勉強していこうと思っています。技術面の向上など学ぶことが多いので、将来に繋がるような仕事をしていきたいです。
金森:今後も撮影監督としての仕事を継続していきたいですが、私はまだ「この作品だったら金森にお願いしたい」と言われるだけの強みがないように感じています。撮影監督として経験を積むことはもちろんですが、他の撮影監督の作品にも参加して、改めて自分の強みを探していきたいです。撮影監督によってフィルターの作り方も全然違うので、いち撮影として参加する機会を活かして勉強し、さまざまな表現を学んでいこうと思います。
アニメ業界を目指す方たちへのメッセージ
山口:明確な目標を決めることが大事かなと思います。私も入社した当初は各役職のあり方までよくわかっていませんでしたが、色彩設計になりたいという明確な目標があったので、生意気に感じられるかもしれないと思いながらも「色彩設計が目標です」と伝えるようにしていました。夢への過程にはつらいこともあるとは思いますが、目標があることはつらさを乗り越えるモチベーションになるので夢をもってほしいです。
金森:私は撮影を志望した理由として「楽しかったから」という点を挙げましたが、本当に大学で撮影を経験したときの楽しかったという気持ちだけで、知識も技術もなく入社したんです。それでも今もずっと楽しいと感じながら仕事ができているので、私のように「楽しかったから」という軽い気持ちから志望することもよいのではと思います。私のいる撮影の部署はほぼ新卒採用で入社した社員で構成されていて、育成環境の整った部署だと思います。もし経験が少ないからといって申し込むのをためらっている人がいたら、もっと楽な気持ちで挑戦してみてほしいですね。歓迎します。