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STAFF INTERVIEW

岡勇一

クリエイティブ事業部 演出・作画ルーム 作画育成監督

培ってきた技術をすべて後輩に継承していきたい

アニメーターになったのは、アニメーターが描く絵が素敵に見えたから

アニメーターになったのは、アニメーターが描く絵が素敵に見えたから

僕が中学生のとき、ちょうど『新世紀エヴァンゲリオン』が放送されていたんですよ。本放送は観ていなかったんですが、社会現象になって再放送をしていたときに観始めて、「アニメっておもしろいな」と思いました。その後、いろいろなアニメを観るようになって、好きなアニメーターさんができ、その方の絵を真似したりしていました。そのころから、だんだんと自分もアニメーターになれたらいいなと思うようになりましたね。ですので、「こういうアニメ作品が作りたい」とか「こういう動きが描きたい」とか、そういった気持ちからではなく、描かれる絵が純粋に素敵に見えたところからアニメーターの道を目指すようになったんです。
その後、専門学校を卒業し、最初はジーベックというアニメ制作会社に入社しました。総作画監督やキャラクターデザインを担当しながら13年間在籍したのですが、あるとき、先に辞めていた後輩から「今度制作する作品を一緒にやりませんか?」と誘われ、自分も長く在籍していた職場にマンネリを感じていたこともあって、ジーベックから離れることにしました。それが2016年くらいのことです。そこからフリーとしてさまざまな作品に参加したのですが、2019年にTVアニメ『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』の総作画監督としてのお仕事をいただいたところから、CloverWorksでお仕事をすることになりました。

作画の新人育成を開始

じつは『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』を依頼されたときには、僕はもう十数年間ずっとキャラクターデザインや総作画監督をやらせていただいていて、ありがたくはあるのですが、昔ほどの情熱を感じられなくなっていました。アニメの仕事を楽しめないというか、少し行き詰まりを感じていたんですね。ただ、CloverWorksは環境もとても充実しているし、各セクションに実力のある方が多く集まっているので、そこで仕事をしてみたらまた情熱を取り戻せるのではないかと思っていました。
ところが、『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』の現場は素晴らしかったにもかかわらず、それを経験してみても自分の仕事に対しては心境に変化が起こらなかったんです。それで2019年末頃、次の作品のお話をくださったCloverWorksプロデューサーの福島さんに「もう業界を辞めようと思っています」とお伝えしました。すると福島さんから「次の作品を担当できないのはわかりましたが、岡さんがアニメ業界自体をやめるのはもったいないです。しばらくCloverWorksで育成担当として作画の新人を指導してくれませんか。」というお話をいただきました。これまで僕もいろんな後輩を指導した経験はあったし、何より教えることは好きだったことと、そういう仕事ならアニメーターとして新たな気持ちで臨めそうだと感じたので、そのお話をお受けして、2020年から作画の新人育成に携わるようになりました。

感性に頼らず、理論を身につけてほしい

感性に頼らず、理論を身につけてほしい

若いアニメーターを指導するときに一番念頭においているのは、「論理的に教える」ということです。人を惹きつける絵自体の「魅力」は、やはりセンスや感性によるところが大きいので、それを理論だけで教えるのは難しく、僕にもそれができるのかどうか、まだ確信をもてているわけではありません。ただ、それ以外のアニメーターとして必要なスキルは、基本的な技術やデッサン力、空間を構成するためのパースの取り方など、本当に理論があるものばかりです。それを一人ひとりの能力に合うようにうまく噛み砕いて教えることができれば、彼らが絵描きとして最低限働いていくための血肉になるはず。年を取り体力や気力が衰えたとしても、アニメーターを長く続けることはできると考えました。感覚や感性だけで日々の仕事をこなすのではなく、ずっと続けていける確固たる理論的な技術を覚えてもらいたいです。
若いころは感性だけに頼って描いてしまう人が多いのですが、吸収する能力が高いので、自分が好きだったり、得意な絵を描いてもらうとすごく上手なんですよ。でも、実際にアニメの現場で必要なものを描いてもらうと、そこに必要な理論を知らなかったりする。たとえどんなにうまくてセンスがあっても、そういうときはデタラメな絵になってしまいます。知らない分野も理論を正しく理解し、その上に独自の感性をプラスしていけば、より良いものが描けるようになります。たとえそれほどセンスがなくても、感性があまり豊かでなくても、僕が教える理論をベースにしたやり方で描いていけば、少なくともアニメーターとして生涯現役でいられる人材を育てられるのではないかと思って指導しています。将来的には、教えた人全員に僕と同じくらいの技術をもってもらい、そこにプラスアルファとなる本人独自の能力をさらに上乗せしていってほしい。そうやって一人ひとり育てていけば、その人たちがまた別の人たちを教えていき、微力かもしれないですが、少しずつアニメ業界全体の基礎能力も上げていけるのではないかと思っています。

自分なりに考え、調べ、見つけていった技術を惜しみなく

自分なりに考え、調べ、見つけていった技術を惜しみなく

今でこそ育成を担当する立場にありますが、僕自身が細かい技術指導を受けたことはほとんどありません。アニメ業界全体がそうだったと思いますが、最初に入社したジーベックにも特別な指導システムはなく、先輩がやっていることを見て、そこから技術を学んでいくという感じでした。ただ、ちょうど運が良かったのか、同期や先輩後輩に熱意と才能あふれる人がたくさんいたので、僕らの世代の情熱や貪欲さとジーベックの環境がうまくマッチして、僕の周りは業界の第一線で活躍している人がとても多かったです。そのなかで芽生えたライバル意識と仲の良さのおかげで、おのずと自分の技術が研鑽されていったような気がします。そういうふうに独自に技術を磨いていったので、今教えている理論も大体は僕が自分なりに考え、調べ、身につけていったものなんです。
じつは、業界に入って1、2年目のころには、すでに感性よりも理論のほうが大事だと感じ始めていました。僕はキャリア2年目に動画マンから原画マンになったんですが、原画を担当するうえで知っておかなくてはならないことが当時の僕にはまだたくさんありました。感性がすごく良ければ、感覚的にそれらをこなしていけるんでしょうが、僕はもともと根が理屈っぽいので「なぜそうなるのか?」を論理的に理解できないと気持ち悪かったんです。「こうするとこうなる」という結論をなんの疑問もなく受け入れるのが嫌で、そこに隠されている計算式がわからないとモヤモヤします。そこで、どうしてだろうと感じたことは自分で分析していくようにしました。躓くたびに自分なりの解決策を見つけて身につけていく。頭を悩ませながら、それを繰り返していきました。ですので、今でも一つひとつの理論を説明できるし、教えることもできます。論理的に覚えておけば、ずっと使っていけるのではないかというのも、そうした実体験に基づいた考えなんです。ただ、どんなに理論武装したとしても、天才的な感性をもった人にはなかなか及びません。でも、そんな人は本当に稀なので、大多数のアニメーターの基礎力を上げるためには理論を教えていくのが一番だと信じてやっています。

褒めて伸ばす!各自のペースに合わせたマンツーマン指導

若手の研修は時間を決めてマンツーマンでおこなっています。最初からそういう計画で進めていたわけではなく、どういう形式で教えるかは手探りで始めました。とりあえず一人ひとりの話を聞いていき、それぞれの指導法を決めていこうと思っていました。個別に話すようにしていたら、いつの間にかそれが馴染んでいき、マンツーマンで指導する形が定着したんです。ただ、マンツーマンだからこそ、それぞれのペースに合わせた指導がおこなえていると思います。人によって理解度にバラつきがありますし、理解しやすい部分と理解しにくい部分は人それぞれなので、ひとつずつ説明するたびに「わからなかった所はある?」と確認して、わかるまで伝えるようにしています。
また、余計なプレッシャーを与えないようにも気をつけていますね。僕自身がプレッシャーを与えられたり追い詰められると、混乱してわけがわからなくなってしまう人間なんです(笑)。ですので、自分を教えているかのように相手の様子を見ながら、余計な不安を与えないよう接しています。相手がヘコむようなことは言わず、「なぜわからないんだ」と問い詰めることもしないようにしています。相手がどこでつまずいているのかをこちらでもきちんと考えていくと、何がわからないのかが見えてくるんです。それは昔、自分も悩んだところだったりするので、「それならこういう説明をしてあげよう」とできるだけ丁寧に指導するよう心がけています。また、良くできている部分はきちんとフォーカスして褒めるように心掛けています。人間、褒められたほうが伸びるし、やる気もでますから。これも、僕自身の経験から来ています(笑)。

アニメーターのキャリアアップにも対応できる一貫した指導体制

アニメーターのキャリアアップにも対応できる一貫した指導体制

研修をおこなった後は、次回に向けて宿題も出すようにしています。「今この人にはどんな技術が必要なのか?」をその場で考え、それぞれに応じたお題を持って帰ってもらいます。ただ、基本の業務があるなかでのことなので、あまりプレッシャーをかけることはしたくありません。課題をこなしてくれれば確かに技術は上がりますが、自分がもし基本業務のほかに課題を与えられたら、絶対に面倒くさくてやりたくないですよ(笑)。ですので、「もしやれたらやるくらいの気持ちでいいよ」とは言いますが、負担を与えず課題にも意欲的に取り組んでもらうにはどういうふうにやっていくべきなのか、いまだに考え続けていますね。
あと、この指導体制の特色としては、ステップアップに応じて僕が一貫して指導していけるという点があります。相手が動画マンのときには原画マンになるための技術を教え、原画マンになってからは原画マンとして現場で必要になった技術をその都度教えていきます。そして、さらに次の役職に上がるために必要になる技術も指導していきます。僕自身はアニメーターとしてすべての役職を一通り経験しているので、各ステップで必要となる技術がわかります。まだ始まったばかりなのでそういう人はいませんが、教え子がどんどんステップアップしていって、例えば作画監督やキャラクターデザインになっても、僕はそのときに必要なことを教えられます。そうやってずっとその人のキャリアを支え続けていけるのも、この体制のメリットかなと思っています。

研修中に交わされる他愛ない雑談も大事なこと

マンツーマンでの指導は1回2~3時間、内容によっては時々4~5時間になってしまうこともありますが、そのなかで、いろいろな話もよくします。なかには「悩みがあってあまり仕事に集中できないです」という相談を受けることもあります。自分の経験から語れることはアドバイスしますし、こうした会話がじつはすごく大事なんです。そこにふとしたヒントや、やる気のきっかけが見つかったりするので、一見無駄に見えるかもしれませんが、多少の雑談を挟むようにはしています。
それに、それぞれの好きなことを話してもらうと、好きなものがその人の絵に表れていることも多いので、そこから特性が分かってくることもあります。例えば、3Dのマップを歩き回るようなゲームが好きな人は、空間の把握能力が優れていたりするので、パースについては少し教えるだけですぐ理解してくれます。こういうものが好きなら、こういうことが結構響くのではないかと、雑談で得た情報が指導に役立つこともあるんです。ですので、ちょっとした会話もとても大事にしています。

業界全体のスキルの下支えにつなげたい

業界全体のスキルの下支えにつなげたい

アニメ業界は慢性的な人手不足のため、業界に入ったばかりで、まだそんなに技術もない人が急に大役を任せられることがあります。大抵はひどい内容のものが上がってしまい、結局は他の人の負担が増えることになることがあります。僕はそういう状況を何度も経験してきました。ただ、そんな人たちのなかにも、きちんとスキルを学習する機会を与えられていれば、問題なく大役を果たせた人がいたはずです。今は業界全体の人手不足のせいで、可能性を奪ってしまっている状況にあるので、少なくとも僕の目の届く範囲ではきちんとした技術を伝え、業界全体のスキルの下支えにつなげていきたいなと思っています。
人手不足ゆえのクオリティの低下は昔から問題になっていましたが、ここ十数年に作品数がさらに増えたことで、より深刻化していると思います。作品数の増加に加え、年々絵の密度も上がってきているので、どこの制作スタジオもスキルの高い人材の確保については厳しい状況です。会社によっては、力量がない人に作画監督を任せたり、本来は動画マンを経て原画マンになるはずのところ、入って1週間のみの研修で動画を飛ばしていきなり原画を任せたりするところもあります。きちんと時間をかけて技術を教えることが大事だし、個人的には教える側の人材ももっと増えればいいなと思っています。

アニメへの愛情をずっと持ち続けてほしい

アニメへの愛情をずっと持ち続けてほしい

これからアニメ業界を目指そうという学生の皆さんには、アニメだけではなくて、いろいろなことに興味や関心をもってほしいです。また、学校の勉強も大事にしてほしいです。絵コンテに書かれていることを読み取るにも、打ち合わせで相手の話を理解するにも国語力が必要ですし、実際に絵を描くなかでは数字の計算や図形の処理が必要な場面もあるので数学力が必要になってくる。また、仕事で多くの人と接していくにはコミュニケーション能力も必要です。国語力、数学力、コミュニケーション能力の高い人は確実に技術の上達も早いですし、上の役職にいける可能性も高くなります。ですので、学校の勉強もしっかりとやっておいてほしいです。
それに加えて、アニメーターとしてずっとやっていくのに大事なのは、やっぱりアニメを好きでいることです。「アニメの絵を描いていることが楽しくてしょうがない」という気持ちをいつまでも持ち続けてほしいです。僕はその気持ちが少し衰えてしまった。だからこそ言えることですが、その気持ちが強い人はずっとやっていけると思います。技術ももちろん大事ですが、結局は根本となるその気持ちが衰えてしまっては、いくら技術があっても続けることは難しいです。そのためにどうすればいいのかは僕も模索中ですが、少し異常だなと感じるほどにアニメへの愛情を持ち続けているくらいでも良いと思います。

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INTERVIEW

  • 2022.3.1

    培ってきた技術をすべて後輩に継承していきたい

    2022.3.1

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  • 2022.3.1

    入社3年目 新人原画マン座談会

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    CloverWorksライセンスルームについて

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