SPECIAL

STAFF INTERVIEW

岡 勇一×中村未奈美

クリエイティブグループ 演出・作画ルーム 作画育成監督×動画検査

5期生をむかえる作画ルーム対談

「作画」の新卒採用を開始し2024年春に5期生が入社。ここまでの道のりとは。

「作画」の新卒採用を開始し2024年春に5期生が入社。ここまでの道のりとは。

中村:最近印象に残っているのは、1期生が以前より積極的に後輩とコミュニケーションをとるよう努めているのを見かけることです。原画マンになり、少し仕事にも余裕が出てきたのかもしれませんが、「先輩」としても育ってきたんだなと思える光景でした。
岡:僕も教え子たちが「自分はアニメ制作で作画という重要な役割の一端を担っているんだ」という自覚を持ち始めた印象をもっています。自分にできることとできないことが分かってきて、仕事にも慣れ、やり方が理解できるようになることで余裕が生まれ、視野が広がったように見えます。変化としては、4期生が入社して一気に人数が増えたので、いい意味での上下関係がうまれ、組織体制が整ってきたように思います。先輩後輩の交流が増えてきたのは良い流れです。
中村:5期生の入社でさらに輪が広がっていくことを期待しています。

過去記事:好みや解釈よりカットに込められた意図を優先させたい
過去記事:培ってきた技術をすべて後輩に継承していきたい

動画や原画、アニメーターの育成について

動画や原画、アニメーターの育成について

中村:新人でも、担当カットを「こういう考えで作業しました」という意見がある場合は、原画指示や絵コンテの意図とずれていなければ尊重するようにしています。あまり私個人の意見を押し付けず、先輩後輩関係なくひとりのアニメーターとして接して伸ばすようにしています。年々人数も増えているため、教える側も一人ひとりと向き合う時間をどう作るかが課題になっていくと思っています。初期からの変化として、一緒に育成に携わってくれる動画検査の仲間も増えたので、育成チームとして情報共有し、認識をあわせて指導内容に差がでないように工夫しています。全員に等しく同じ知識を伝えていく必要があると思っているので、これは続けていきたいです。
岡:作画育成監督としての仕事内容は以前の記事にあるとおりですが、内容はかなりブラッシュアップしていると思います。教え子はこちらの目論見どおり、ひととおりの技術と知識をもち仕事ができる人材に育ってきてくれているので、これからもさらに効率よく、改善すべきところは改善し指導したいと思っています。以前掲げたとおり、生涯現役のアニメーターとして生活できて、どのような現場でも対応できるクリエイターを育成するという方針は変わっていません。僕が教えるのは基礎的なことなので、それさえ身についてしまえば自分で学ぶ人はどんどん伸びていきます。抜きん出た才能をもつクリエイターをどのように育てるのかはまだ手探りのところもありますが、せっかくの才能を基礎練を強いて押さえつけて潰してしまうことはやってはいけないと思っています。最低限の基礎は身につけさせますが、基礎をたたきこむというよりは足りない部分を見つけて、その人に必要なことを伝える指導に重きを置ければと考えています。

採用で求めている人材について

中村:多様性がほしいと思っています。例えば先輩から貪欲に学ぼうとするようなキャラクターの人が入ると新たな雰囲気が作り出されたりします。
岡:新しい刺激、新しい文化をもたらしてくれる人を求めていますよね。
中村:キャラクターデザインは絵柄に流行りが出るものだと思います。若者に向けた作品や、学生を描く作品を制作する会社としては、いま流行っているものや10代に刺さる絵柄などを知っている若い人の感性は重要だと思います。
岡:キャリアが長くなると技術や経験値は上がりますが、その一方で感性が鈍ったり世間に疎くなる部分もあります。そこに、仕事の経験値は低くても作品ターゲット層に近いような若い感覚の人が加わってくれることで相乗効果がうまれることがあります。こちらは知識や経験や技術を伝え、逆に新人からは最新の情報やセンス、フレッシュな感覚を教えてもらえる良い機会だと思います。

現在は新卒採用で入社した方を限定に育成中

現在は新卒採用で入社した方を限定に育成中

岡:いまのところ指導できうる人数にも限度があるので新卒に限定しています。すでにアニメの現場を知っていると、僕らが伝える価値観や技術をそのまま受け入れることに抵抗があって難しい場合があります。新人ですと、指導を柔軟に吸収して素直に伸びてくれる部分があると思います。
中村:その分、教える側の責任は大きいと感じています。「アニメ業界に入ることができた!やった!やってやる!」といった勢いや情熱は、新卒採用で入社される方特有のパッションです。その勢いを消さないように動画を教え、岡さんの研修に繋いでいけるようにしたいと思っています。
岡:具体的な目標をもち、情熱でメラメラ燃えている人に入ってきてほしいですね。
中村:同期でライバル心を燃やして切磋琢磨している様子や、お互いに意見を出しあって相談しあっている姿も見ていると、いい関係だなと微笑ましいですし、お互いに吸収して伸びる環境ができてきたのかなと思います。
岡:同期の存在は大切ですね。育成といえば、以前のインタビューで構想に触れていますが、より多くの方を受け入れ教える体制づくりを具体的に考えています。僕が作画育成監督としてメソッドを伝えた人たちのうち適性がある人には、後輩指導の一端を担ってもらい育成の輪が広がっていくような体制です。これは教える先輩側にもメリットがあります。教えるというのは、自分の中で明確に知識や理論が言語化できていなければなりません。理解していたつもりでぼんやりと認識していた技術や理論をもう一度見つめ直す必要があります。僕自身が経験してきたことですが、教えることが自分自身の成長にも繋がると思っています。これから教え子たちにも「教える」ことも経験してもらいたいなと考えています。

CloverWorksでは作画のキャリアは動画からスタート

CloverWorksでは作画のキャリアは動画からスタート

岡:「動画」はアニメーターの基礎だと考えています。他セクションに迷惑をかけない仕事のやり方や、作画の素材づくりのメソッドなどを学ぶには、動画を実際に仕事として経験するのが一番です。原画のクリンナップや原画の間を機械的に中割りするだけの作業ではなく、作画工程の知識を得られるので、作画という仕事の入門は動画だと思います。動画という作画技術の基礎を中村さんたち動画チームの元できちんと学んでいる人たちに指導するところから始められるのはとても助かります。
中村:動画側としても、教えた人たちが岡さんの研修を経て原画マンになったことで、相互のコミュニケーションがうまれています。直接コミュニケーションをとって意思疎通がはかれるのは、CloverWorksのこの環境ならではだと感じます。

動画や動画検査の仕事の魅力とは

動画や動画検査の仕事の魅力とは

中村:動画や動画検査を選択する人が増えて欲しいとは常々考えています。最初から動画や動画検査を目指さなくてもいいですし、一方で必ずしも全員が原画を目指さなければならないわけでもありません。どちらも経験した結果、原画より動画のほうが楽しいと思ったり、原画の仕事が向いていないと感じる人も一定数いるのが現実です。原画と動画には上下関係はなく別スキルの仕事なので、アニメーターの仕事の選択肢として動画を選ぶという道もあると思ってもらえると嬉しいです。
岡:動画検査の役割が、作品にとってすごく重要なのだという認識がもっと伝わればいいですよね。動画の次は原画、その次は作画監督というキャリアイメージが一般的ですが、動画検査という作品のクオリティを左右する重要な仕事もあるということも知ってもらい、選択できることも伝えたいです。
中村:CloverWorksに入社してから、動画検査の仕事を褒めてもらえることが増え、重要な仕事を担っているのだという自信が持てるようになりました。実際の画面に映る絵を描くのが動画の仕事なので、動画の丁寧さによって見栄えが大きく左右されます。自分の仕事が映像に反映されると、頑張って良かったなと思えます。また、原画の仕事では参加作品に最後まで直接関わることは少ないと思いますが、動画検査は最後まで関われます。他セクションの皆さんと一緒に納品の達成感を得られる仕事でもあります。動画検査は各話ごとの担当ですが、場合によってはひとつの作品にローテーションで参加することもあり、そうなると長い期間同じ作品に関わることになります。例えば『明日ちゃんのセーラー服』では、線が多かったり細かい芝居の検査をやり遂げられたことが自信になりました。

応募するポートフォリオ作成のポイントやアドバイス

応募するポートフォリオ作成のポイントやアドバイス

中村:動画や動画検査を志望している方ならクリンナップや動きがわかる絵を入れてほしいです。また、普段描かれている落書きも、その方の人柄やどのように絵を動かしたいと考えているかが見えるので、たくさん入れていただけるとわかりやすいです。
岡:原画育成を担当する僕個人の意見としては、動画検査志望でなければ、クリンナップや動画として中割をした動画素材、例えば歩きの動画素材などは無くても大丈夫です。原画としての動きの理屈と基礎は入社後にしっかりと教えます。その代わり、とにかく背景と人間がフレームに収まって描いてあるレイアウトをたくさん入れてほしいです。原画の仕事というのは、動きを描くだけではなく、スクリーンに映る作品の画面を構築することも含まれるので、ただ漠然とではなく完成画面を想像して、背景と人間がフレームの中に収まった絵をたくさん描いてほしいです。
極論を言えば、わからないなりに描いた絵のなかでもセンスや意気込みは感じとれますので、パースはめちゃくちゃでも良いです。もちろんパースを理解できているならそれはアピールになります。また、中村さんと同じく落書きはたくさん見たいです。線の走らせ方や、執着しながら絵を描いているかなど、落書きからいろいろな情報が見えてくるためです。例えば、得意な部分だけ描いて苦手な部分は描かない人や、丁寧に細部まで書き込む人など、落書きひとつをとってもさまざまなことがわかります。「アニメーター」を志望しているということを意識して、ポートフォリオを作っていただくと良いと思います。
中村:いまの実力に満足せず、より成長したい、もっとうまくなりたい、という人に入社してほしいなと思います。
岡:現状に満足していないギラギラした熱を絵から感じられると良いですね。この記事を読んでくださった方は、手探りにでもレイアウトを描いてきてくれると思うので、何かを掴もうともがいている人を見つけていきたいです。

作画を目指す学生に向けてメッセージ

岡:フリーランスではなく会社員のアニメーターとしてCloverWorksに所属するということは、これから業界が向かう方向を考えても良い選択だと思います。さまざまなことに興味をもち、楽しんで取り組むことができるような好奇心旺盛な人が良い仕事をしているように思いますので、そういう人に志望してもらいたいと感じています。
中村:自分の就こうとしている仕事の知識や、それを知ろうとする姿勢は大切なことだと思っています。応募というより内定された方に向けた話ですが、絵に自信をもつことはなかなか難しいかもしれませんが、CloverWorksに入社する方はそれだけの実力があるということなので、それは努力をした結果だと思います。採用が決まった方には自信をもって入社してほしいです。お待ちしています。

©博/集英社・「明日ちゃんのセーラー服」製作委員会
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